体温管理

国内におけるプレウォーミングは定義すらされていない

手術看護LABO内で、プレウォーミングに関する講義動画をアップしましたので、今回はプレウォーミングに関するお話をしようと思います。

実はプレウォーミングって、海外では1990年代から研究が始まっていて、1993年には既にプレウォーミングが効果的であることが検証されています。

ところが日本国内においては「プレウォーミング」という言葉が一人歩きしていて、

  • 手術室入室にあたって皮膚の露出を最小限にする
  • 手術台を温めておく
  • 室温を上げておく
  • 消毒液を温める
  • 輸液を温める

といった、「保温」でさえもプレウォーミングの一環として扱われてしまっています。

プレウォーミングというのは名前の通りwarming(加温)であって、本来は予め末梢組織の温度を上げる行為を指すんですね。

皮膚の露出を最小限にするといった「保温」は、ヒトがもともと持つ核心温と末梢温の温度勾配の拡大を防ぎます。

これによって麻酔導入に伴う中枢から末梢への熱の再分布量の増加を防ぎますが、これはあくまで熱の再分布を増加させないケアであって、低体温発生率が減らせるわけではありません

 

プレウォーミングの定義

冒頭にもお伝えした通り、国内ではプレウォーミングの定義が一人歩きしており、かなり拡大解釈されています。

 

そもそもの話、国内ではプレウォーミングの定義すらされていないのが現状です。

 

海外においてプレウォーミングは、

  • Preinduction warming
  • Prewarming

 

という言葉で表現されますが、これらの言葉が具体的に何を指すのかというと、ほとんどの論文では、

 

  • forced air warming

 

を指します。

 

強制空気加温、つまり、温風式加温装置による強制的な加温です。

 

プレウォーミングの目的

プレウォーミングの一番の目的は、全身麻酔導入による末梢血管の強制的な拡張と、体温調節性血管収縮の発現閾値低下に伴う再分布性低体温を軽減することにあります。

 

残念ながら、麻酔導入に伴う熱の再分布は必ず起こります。

 

ところが、プレウォーミングをしておけば熱の再分布を軽減することができ、結果的に核心温36℃以上の「正常温」を保つことができるというわけです。

 

全身麻酔に伴う再分布性低体温

これも手術看護LABO内で詳しく講義をした内容になりますが、非麻酔時のヒトというのは、一定の核心温を維持するために自律性の体温調節が無意識に行われています。

 

この自律性体温調節の中で、体温低下の予防に最も大きく寄与するのが末梢血管の収縮であり、体温調節性血管収縮と呼ばれます。

 

体温調節性血管収縮は特に四肢末端で動脈から静脈に移行する部分「動静脈吻合部」で顕著に見られます。

 

この体温調節性血管収縮の存在によって、普段は血液を介した熱の移動がコントロールされています。

 

ところが全身麻酔はこの体温調節性血管収縮を強制的に解除するだけでなく、核心温が大きく低下しないと起こらないようにしてしまいます。

 

熱というのは必ず高い側から低い側へと移動するので、全身麻酔によって血管拡張が起こると、中枢温は容易に冷たい末梢組織へと移動してしまいます。

 

 

通常、ヒトの核心温と末梢温との間には3〜5℃程度の温度勾配が存在するので、この温度勾配が大きければ大きいほど、核心温の低下は大きくなります。

 

末梢温を上げることがプレウォーミング

ここまで読んで頂ければお分かり頂けると思いますが、プレウォーミングは麻酔導入前に末梢組織の温度を上げる行為を指します。

 

間違っても、末梢組織の温度を下げないための「保温」ではありません。

 

麻酔導入前の保温は、末梢組織の正常な温度である31〜35℃という温度をそれ以上下げないためのケアですが、

 

プレウォーミングに求められるのは末梢組織の温度を正常値以上に高める行為です。

 

麻酔導入に伴う再分布性低体温を軽減し、周術期を通して36℃以上の正常温を保つためには、保温ではなく加温をする必要があるのです。

 

まとめ

今回の記事ではプレウォーミングに関するお話をしましたが、手術看護LABO内の講義動画では海外の論文を用いて根拠を示しながら、プレウォーミングの定義と効果を詳しくお伝えしています。

興味のある方は、ぜひご参加ください。

手術看護LABO

 

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