体温管理

手術中は、なぜ体温が下がるのか

 

手術中には、なぜ体温が下がるのか。

 

麻酔法にもよりますが、基本的に手術を受ける患者は体温が下がります。

手術でなくとも、低体温というのは様々な合併症の原因となるので、可能な限り防ぎたいものです。

今回は、周術期に関わる看護師のために、なぜ手術中の患者は体温が下がるのかを説明します。

体温低下の原因は麻酔にあり

手術中に体温が下がる原因は、主に麻酔によるものです。

ヒトは恒温動物なので、外部の環境に関わらず体温は一定に保たれます。

体温を一定に保つために、ヒトは行動性体温調節自律性体温調節という2種類の方法で体温調節を行なっています。

麻酔がかかると、この体温調節機構の一部分が働かなくなったり、あるいはほぼ完全に働かなくなります。

基本的に、麻酔の範囲が大きいほど体温調節機構が大きく抑制されるので、体温が下がりやすくなります。

行動性と自律性という2つの体温調節機構について、もう少し詳しく説明していきます。

行動性体温調節

行動性体温調節とは、人が「暑い」「寒い」という情報をもとに、意識的に行う体温調節を指します。

具体的には、

  • 服を着る、脱ぐ
  • 冷暖房を調節する

などの行動です。

行動性体温調節は、まず何より意識がないとできません。

そのため、全身麻酔で手術を受けた患者の場合、行動性体温調節は完全に消失します。

麻酔によって行動性体温調節が消失する場合は、自ら体温調節を行うことができなくなるので、

手術室内の涼しい環境温に伴い、体温が下がりやすくなります。

自律性体温調節

自律性体温調節とは、「暑い」「寒い」という情報をもとに、自律神経系の働きによって無意識に行われる体温調節です。

具体的には、

  • 寒くて体が震える
  • 暑くて汗をかく
  • 末梢血管の収縮や拡張

などです。

自律性体温調節は意識の有無にかかわらず、自らの意思でコントロールすることができません

無意識にガタガタと体が震えるのは、寒さに対して体温を上げようとする自律神経系による熱産生反応です。

逆に汗をかくような時は、暑さに対して体温を下げようとする反応が起こっていると言えます。

血管の収縮や拡張に関しては、基本的には血管が収縮すると熱が逃げにくくなり、逆に拡張すると熱が逃げやすくなります。

麻酔は交感神経を遮断するので、基本的に麻酔がかかると血管は拡張し、熱が逃げやすくなるのです。

これらの自律性体温調節がどの程度抑制されるかは、麻酔の範囲に依存します。

自律性体温調節を司るのは視床下部なので、全身麻酔では視床下部の体温調節中枢そのものが抑制されます。

その結果、体の震えや発汗、血管の収縮や拡張といった全ての自律性体温調節が起こらなくなります。

厳密に言うと全身麻酔でも自律性体温調節は起こるのですが、低体温や高体温がかなり進行しないと起こらないので、

全身麻酔では自律性体温調節が起こらないと思っておくほうが良いと思います。

それでは、全身麻酔ではなく局所麻酔の場合はどうなるのでしょうか。

局所麻酔の場合、体温調節中枢である視床下部は抑制されないので、自律性体温調節の抑制は限定的になります。

具体的に言うと、局所麻酔で起こる自律性体温調節の抑制は、麻酔が効いている部分の血管拡張のみです。

血管拡張の範囲が広いほど体温が下がりやすくなりますが、視床下部の働きは抑制されていないので、体の震えや発汗は起こります。

その他の要因

行動性体温調節や自律性体温調節の抑制の他にも、体温が下がる要因が存在します。

手術では創部を生理食塩水で洗浄することがありますが、この洗浄によって、体の内側から冷却されます。

また、全身麻酔中で人工呼吸管理されている場合は、呼気中の温かい水蒸気が大気中に蒸散することで、熱を逃す原因となります。

まとめ

手術で体温が下がるのは、主に麻酔が原因となります。

基本的には、麻酔によって

  • 行動性体温調節
  • 自律性体温調節

のどちらか、あるいは双方が抑制されることで、

  • 熱が逃げやすいにも関わらず
  • 熱産生行動が起こらない

という状態になります。

麻酔以外にも、術中の洗浄による冷却や呼気からの蒸散といった様々な要因が重なるため、

手術中の患者は体温が非常に下がりやすい状態となるのです。

 

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