手術看護

認知症患者と大腿骨頸部骨折手術

「認知症」という言葉は医療者にとっても破壊力抜群で、手術室看護師は認知症患者の意識下手術というだけで、「大変だな...」ってイメージを持つと思います。

 

認知症の患者さんというのは、そもそも中核症状として見当識障害や記憶障害があるので、手術を受けること自体を理解できないことが多いんですよね。

 

そんな状態で意識下に手術を受ければ、当然ながら暴れて大変なことになるわけです。

 

その中でも特に大変なのが、大腿骨頸部骨折の手術。

 

 

牽引台の上で人が暴れるというのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

この上なく危険です。

 

 

暴れるだけならまだしも、そのまま手術をしなきゃならないわけです。

 

 

そういう苦い思いを誰もがしてるから、認知症と聞いただけで大変な手術になるかもしれないというイメージを持ってしまうのも自然なこと。

 

だけど、

 

 

もしも認知症っていう情報がなかったら、どんなイメージを持つだろうか。

 

 

おそらく、大変だとかそういうネガティブなイメージはこれっぽっちも抱くことはないと思うんですよね。

 

「認知症」という言葉を聞くと、暴れまくる患者さんをどうにか抑えて、術中を耐え凌ぐことが看護だと思えてしまう。

 

患者安全なんて言葉を使って、それがベストだとこじつけてしまう。

 

だけど、本当にそうだろうか。

 

牽引台の上で暴れまくる認知症の患者さんに、本当にしてあげるべきことって何だろうか。

 

認知症とBPSD

大腿骨頸部骨折に対するORIFを受ける認知症患者さん。

手術が始まると、とにかく暴れまわります。

 

そりゃそうですよね、見たこともない場所に連れてこられて、縛り付けられて、じっとしてろって言われるわけですから。

 

 

 

 

暴言吐いたり従命が入らなくなったりするのが当たり前で、「そもそも認知症だからしょうがない。」そう思われますよね。

 

ところが、別に認知症の患者さんだけが暴れるわけではないじゃないですか。

 

認知症に限らず、高齢で緊急手術を受ける患者さん、かつ意識下での手術の場合、術中にせん妄を発症しやすいので。

 

それにも関わらず、

 

認知症の患者さんは「しょうがない」と思われ、

認知症でない患者さんは「せん妄が起こってしまった」と思われる。

 

手術とせん妄

周術期に起こるせん妄は予後に影響すると言われています。

 

だから、周術期にはせん妄に関するリスクアセスメントを行い、リスクの高い患者さんにはできるだけ早くから関わりを持つようにします。

 

緊急手術の場合でも、時間があればできるだけ早い段階で外回り看護師が顔を見せて、面識を持ってもらうことが大事だと思ってます。

 

だけど、認知症という情報があると、

 

術中に暴れまわることはせん妄と言うより認知症の症状だと思われてしまって、「予防」という意識を持つことが少ないように感じるんですよね。

 

認知症の患者さんが術中に暴れまわることが予後に影響するかどうかは分かりませんが、

 

少なくとも周術期のせん妄は予後に影響すると言われています。

(さっきも言ったけど、大事なことなので再び言うことにしました。)

 

「認知症患者な大腿骨頸部骨折か。よし、頑張って患者さん落ちないように頑張るぞ。」っていうのも大事だと思うんですけど、

 

それよりもまず、「暴れる」というせん妄症状を予防することを第一に考えたいなって思うんです。

 

頼むから全身麻酔にしてくれ

何で脊椎麻酔?

 

頼むから全麻にしてくれよ。

 

 

 

 

 

 

これが手術室看護師の正直な気持ち。

 

「暴れるから」という理由の他にも、脊椎麻酔に伴う体位変換の際に骨折部が転移してしまって術式変更を余儀なくされる可能性があったり、術中の整復がスムーズだったり。

 

だけど、麻酔をかける先生の気持ちもよく分かります。

 

認知症の患者さんだと病歴聴取もしっかりできないし、高齢になればなるほど、麻酔範囲は狭い方がベターです。

 

脊椎麻酔や末梢神経ブロックなどの局所麻酔で術中にせん妄が起こった場合と、全身麻酔で手術してせん妄が起こらなかった場合。

 

どちらが患者さんにとっていいのかを比較することはできませんが、僕の中の大きな疑問の一つです。

 

「暴れない」看護は可能か

認知症と言っても、症状は人それぞれ。

 

中核症状の一部しかない人もいれば、常にBPSDが出てる人もいる。

 

一律に「暴れない」ようにする方法はないと思うんですけど、個人的に「暴れない」ための努力は可能なんじゃないかと思うんですね。

 

認知症とユマニチュード®︎

ユマニチュード®︎というケア技法があるんですが、ご存知でしょうか。

 

ユマニチュード®︎を詳しく語るだけの知識はないので、詳しくはコチラをご覧頂きたいと思います。

 

 

牽引台の上にいる患者さんにユマニチュード®︎を行うにあたっては、顔を覗き込む形になってしまったりと、気をつけなければならないこともあるんですが、ひとまずやってみた結果。

↓↓↓

暴れなかったどころか、術翌日、2日目、3日目と術後訪問しましたが、覚えててくれたんですよね。

 

術中に手を握ってたら患者さんが昔の話をしはじめてくれて。

旦那の転勤の話とか、どこのご飯が美味しいとか、そういう他愛もない話です。

 

術中にしてた話の続きを、術後訪問でしてくれるんですよね。

 

認知症って言っても本当に症状は人それぞれなんですけど、

 

麻酔方法とか鎮静薬とかそういう医学的な部分じゃなくて、

 

僕ら看護師はあくまで人と人との関わりの中で生まれる看護という学問でアプローチできるんだなって改めて感じた瞬間でした。

 

認知症と手術

どんな場合であっても患者安全は必須。

暴れてしまった患者さんは落ちないように抑えなければなりません。

 

だけど、抑えなければならないのは暴れるからであって、暴れないアプローチができればそれに越したことは無いわけです。

 

認知症患者の意識下手術と聞くと大変だと思ってしまいがちですが、そのイメージから「暴れないためのアプローチ」が見えなくなってしまっている自分がいたことも事実。

 

ユマニチュード®︎をもっと学びたいと思う今日この頃です。

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